離婚届で自署が必要なのは署名欄だけ
離婚の話し合いがまとまり、離婚することにお互いが合意すれば、離婚届を役所に提出します。離婚届が受理されれば、離婚成立です。この離婚届ですが、それぞれの本籍地、住所、両親の名前、証人など、記載する事項がたくさんあります。しかし、これら記載事項の中で、本人が自署しなければならないのは、1ページ目の下部にある署名欄だけです。
離婚届は勝手に提出できてしまう
裏を返せば、そのほかの欄は誰が記載しても構いません。夫婦の片方が他の全てを埋め(証人欄の署名はそれぞれの証人が自署する必要があります)、もう片方は自分の署名だけする、ということも可能です。印鑑も不要です。そうすると、勝手に署名をして、勝手に離婚届を出す、ということも、やろうと思えばできてしまいます。
離婚無効確認の手続をとる
勝手に離婚届が出されてしまった場合、離婚無効確認の手続をとり、無効であることが認められれば離婚はなかったことになります。
離婚が有効であるためには、離婚届が出された時点で、夫婦双方に「離婚の意思」が存在することが必要です。ですから、離婚無効確認の手続では、届け出の時点で離婚の意思がなかったことを主張、立証していきます。
具体的には、家庭裁判所に離婚無効確認調停を申し立てます。勝手に届け出た方もこの調停で離婚の無効を自ら認めたなら、裁判所が離婚無効を確認します。
もし、勝手に届け出た方が無効を認めないなら、離婚無効確認訴訟を提起することになります。訴訟で「離婚の意思がなかったこと」を主張し、証拠も提出した結果、裁判所に「離婚の意思がなかった」と認めてもらえれば、「離婚無効」の判決が出ます。
離婚無効の証拠
証拠としてまず収集するべきは、離婚届の写しでしょう。役所または法務局で請求すれば交付を受けられます(どちらで保管されているかは届け出られた時期によって異なります)。勝手に署名され届け出られたのであれば、自署欄はご自身の筆跡と異なるはずで、そのことを立証するのが一つの方法です。
また、届出がなされた時期に離婚に合意するはずがない、離婚届に署名するはずがないといった事情を説明するのも方法です。そのころの夫婦のやり取りが録音やメッセージに残っていて、そこから離婚に合意するはずがないということが分かれば、「離婚意思がなかったこと」が立証できるかもしれません。
勝手な届出を防ぐ方法:「不受理申出」
もし、離婚届を勝手に出されそうだという危険があるなら、速やかに役所に離婚届の「不受理申出」をしておくことをおすすめします。「不受理申出」が先になされていれば、離婚届が提出されても、文字通り「不受理」になります。受理されなければ離婚は成立しません。
これは、自分で署名した離婚届を既に相手に渡してしまっている、という場合にも有効です。けんかの勢いなど、何らかの理由で離婚届に署名し、相手に渡してあるといった場合もあるでしょう。あとあとよく考えて、やっぱり今は離婚しないと心変わりした場合でも、離婚届をそのままにしておいたら、いつ相手に離婚届を出されてしまうか分かりません。離婚届を回収することでもよいですが、「返して」「破棄して」と伝えた時点で相手がどうしても離婚したいと思っている場合には、「離婚を拒否されたら困る」と考えて即座に提出してしまうかもしれません。そのリスクも考えれば、「やっぱり離婚しない」と考えた時点で先に「不受理申出」をしておくことが賢いといえます。
なお、不受理申出は、一旦行うと効力がずっと続きます。その後に話し合って離婚の合意に至れば、不受理申出を取り下げると離婚届が受理されるようになり、離婚ができます。
ここまで、離婚届を勝手に出された場合の対処法・出されないための対応策について、当事務所の弁護士宗川雄己(京都弁護士会所属)が解説しました。
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